近年、大きな注目を集めているチャットボットのメリットや作り方、活用法をまとめました。

チャットボットは人工知能を活用してユーザーと会話することのできるプログラムとして、様々な場面で活用され始めています。

ビジネスの場ではカスタマーサポートにチャットボットを活用する企業が増えてきたり、Web接客への活用法も注目されてきています。また、エンタテインメントの場では、マイクロソフトの「りんな」など、ユーザーとの雑談を楽しむことのできるようなチャットボットも登場しています。

人工知能技術の発達が進むにつれ、チャットボットでできることは今後増え続けることは明確で、チャットボットによって様々な仕事が奪われるという予測もなされています。

今回は、そんなチャットボットについてご紹介したいと思います。

チャットボットとは


チャットボットの定義として明確なものはありませんが、簡単に言ってしまうと「会話形式でのやり取りが可能なプログラム」のことです。人工知能(AI)の技術が活用されているサービスの代表例として紹介されることが多く、人間と機械が会話をするという、SF世界の空想と思われていた事が、近年現実味を増してきました。

チャットボットは基本的には普段みなさんがよう使われているLINEやFacebook Messengerなどのメッセージングプラットフォーム上に公開されています。独自のウェブサイトやアプリを公開している場合もありますが、やはり普段から利用している人が多いメッセージングプラットフォーム上でユーザーとのコミュニケーションが取れるという点がチャットボットの大きな魅力の1つであるため、その多くがその形を取っています。

有名なチャットボットの1つとして、Microsoftが提供している「りんな」と呼ばれるキャラクターが女子高生という設定のチャットボットがあります。これはテレビドラマ「世にも奇妙な物語」の主演として出演するなど、日本のチャットボットでは最も有名なチャットボットの1つです。

他にはリクルートの「パンダ一郎」というチャットボットがあります。このボットは会話を通してアルバイトを探すことができるというチャットボットであり、会話するだけのチャットボットではなく、ユーティリティ機能も兼ね備えています。ただ、会話の精度は比較的高く、注目されているチャットボットの中の1つです。

チャットボットの仕組み

チャットボットの多くは、ディープラーニングを使用したAIエンジンによって会話が可能になっています。ディープラーニングは非常に難しい技術なので、簡単に説明することはできませんが、ポイントとなるのは「言葉の関連性」です。

このディープラーニングを用いたチャットボットですが、実は言葉の本質の意味を理解していません。「今日の天気は?」と聞かれてもその言葉自体には何も意味が無く、チャットボットは理解していません。しかし、「今日の天気は?」と聞かれたら、その言葉の関連性から「今日は晴れです」や、「今日は雨だから傘を忘れずにね」などのような言葉を返すようなプログラムによって成り立っています。

他には「天気」という言葉が入っていたら、今日の天気に関する情報を返すなど、「ルールベース」で作られたチャットボットも存在しています。実はディープラーニングを用いたチャットボットよりもルールベースのチャットボットの方が高いレベルの会話を実現できているようで、ディープラーニング技術の影で一部の人からは注目されています。

チャットボットを活用するメリット


ではチャットボットを公開する企業側のメリットは何があるのか考えてみたいと思います。

顧客とコミュニケーションが取れる接点が1つ増える

ウェブ上での企業とユーザーの接点と言えば、Webサイト、アプリが現在は主流です。それらに次ぐ第三の接点がチャットボットになるのではないかと考えられます。

Webサイトはユーザーにアクセスしてもらわないと見てもらうことができず、一度訪れたユーザーが定期的にアクセスしてくれる保証もありません。アプリはプッシュ通知を使って企業側からアクションを起こすことができますが、ある程度開発費が必要なため、大企業でないと自社サービスのアプリを公開することは難しいです。

それに対してチャットボットはbotを作成し、LINEやFacebook Messengerなどのプラットフォームに公開することで、そのプラットフォーム上にもユーザーとの接点を作ることができます。一度チャットボットを利用してくれたユーザーには再度企業側からメッセージを送ることもできるため、再訪率もウェブページと比べると断然高いです。

もちろんチャットボットを作るのも大変ですが、最近ではチャットボットを簡単に作れるようなサービスもあるため、費用を抑えてチャットボットを作ることができるようになってきました。

マーケティングに利用することができる

チャットボットの一番の魅力は双方向のコミュニケーションが取れるということです。これまでのWebサイトやアプリでは基本的に企業側が一方的に情報発信をするものが多く、ユーザーが取れるアクションは限られていました。しかしチャットボットはユーザーからのメッセージを受け取ることができるため、これまでは難しかった双方向のコミュニケーションをとれるようになります。

また普段良く使っているメッセージングプラットフォーム上で情報発信することができるため、従来のメルマガやプッシュ通知と比べると開封率が高い点も魅力です。

チャットボットの上手な活用法

LINEやFacebook Messengerなどのプラットフォームにチャットボットを公開しても、ユーザーがチャットボットを利用してくれなければあまり意味がありません。

よく利用されるチャットボットにするためには、下記に注意して作成すると良いでしょう。

チャットボットのコンセプトを決める

まず大まかにどういったチャットボットにするかを決める必要があります。乗換案内などのユーティリティ機能を持ったチャットボットなのか、もしくは気軽に雑談を楽しめるおしゃべり用チャットボットなのか、まずはチャットボットのコンセプトを明確にし、チャットボットの方向性をしっかりと決めましょう。

自然言語処理を導入するのか

自然言語処理を導入するかどうかが1つのポイントとなります。ユーザーによるテキスト入力に対して適切な返答を返せるようにしょうとすると、自然言語処理が必須となってしまいます。

それとは逆に、ユーザーからのテキスト入力については定型文を返し、チャットUI上に表示されるボタン操作によって会話を進めるというパターンにすることができます。

前者の自然言語処理の導入に関しては、よりチャットボットの自由度が増え、面白みのあるものにすることができますが、その分ある程度のテキストに対して返答できるようにしておかないとユーザーの期待を裏切ってしまうため、ボット作成にかかるコストが高くなってしまいます。

また、将来的にはすべて音声入力になる日も来るでしょうが、現在はまだ指を使ったテキスト入力が主流です。例えば乗り換え案内の場合、テキストで「自宅までの経路」と入力するよりも自宅までの経路を調べることのできるボタンがあった方がユーザーとしては使いやすいでしょう。

チャットボットであるからといって全て自然言語処理による会話を目指すのではなく、ボタンやウィジェットを使ったボットにした方がよく使われるチャットボットになる可能性もあります。

自然言語入力を利用するのか、ボタンやウィジェットを利用するのか、ユーザーの視点に立って考えてみましょう

チャットボットの作り方

自然言語処理が使えるサービスを利用する

チャットボットを作るためには、入力された言葉を分類するための自然言語処理が必要となります。

自分で1からこれを作るのはデータ分析の難しい知識が必要なので、自然言語処理を行うことができるサービスを利用しましょう。

有名なのはIBMが提供している「Watson」です。Watsonの「自然言語分類(Natural Language Classifier)」と呼ばれるサービスを利用すると、入力されたテキストを予め指定しておいたクラスに分類することができ、チャットボットの基本となる部分が完成します。

YoutubeにWatsonの自然言語分類を説明した動画が公開されています。

Watsonを利用したチャットボットのやり取りの基本的な流れは以下の通りです。

  1. Watsonの自然言語分類に学習データから分類器を作成
  2. ユーザーの入力したデータをWatsonに投げる
  3. Watsonから分類されたクラスのデータが返ってくる
  4. クラスに応じた返答をユーザーに返す

ステップ1で学習データを作成し、ステップ2~4でユーザーとの会話を行います。2~4のステップで場合分けをつけたり、直前のやり取りをデータ化して利用することで複雑な会話を実現することができます。

しかし、Watsonは月額利用料に加え、1リクエストあたり0.3円の料金がかかってしまうので注意してください。

チャットボット作成サービスを利用する

自分でシステム部分からチャットボットを作るのは難しそうな方は、もっと手軽にチャットボットを作成することのできるチャットボット作成サービスを利用しましょう。

チャットボットを作成するためのサービスは近年急速に増加しており、サービスによって特徴はありますが、しっかりと作り込めば完成度の高いチャットボットを作成することも可能です。

低価格でチャットボットを作成できるサービスとして注目されているのが、「Repl-AI」というサービスです。

repl-ai

Repl-AIはNTTドコモとIPI社が共同開発したサービスとなっており、分かりやすい管理画面や、賢いチャットボットを作れるという点で注目されています。

もちろんLINEやFacebook Messengerでのチャットボットを動かすことができるので、これからチャットボットの導入を検討されている方は一度チェックしてみてください。

その他のチャットボット作成サービスはこちらにまとめました

カスタマーサポートがチャットボットに


カスタマーサポートはチャットボットで置き換えることのできる業務の中でも特に注目されているジャンルの1つです。カスタマーからの問い合わせに対し、適切な答えを返すことがカスタマーサポートの業務なので、まさにチャットボットの得意分野というわけです。

有名なカスタマーサポートのチャットボットとして、LOHACOの「マナミさん」というチャットボットがあります。このマナミさんによって6.5人分の人件費を削減したと伝えられており、現在すでに活用されているチャットボットです。

LOHACOだけではなく、カスタマーサポートでのチャットボットの活用は業界として非常に注目されており、今後も多くの企業がチャットボットをカスタマーサポートに導入すると見られています。

まとめ

チャットボットは間違いなく2017年注目される技術となります。スマホアプリが世の中に浸透した時も、一部の企業が他より早くスマホアプリを作り上げ、それが有名になってから多くの企業やサービスがアプリを公開することとなりました。

実際に使われているチャットボットの活用事例をこちらはこちらでまとめています。

チャットボットはまさにこれから流行するサービスです。マーケティング担当者やウェブ担当者はしっかりとチェックしておきましょう。