世界中のデザイナーたちが作り上げる作品を観察することで、その年を代表するようなトレンドがどのようなものなのかが見えてきます。
2022年はどのような魅力的で素晴らしいデザインが登場するのでしょうか?
今回は、2022年に流行するグラフィックデザインの10個の最新トレンド予測をご紹介していきたいと思います。
この記事は、GraphicMamaによって公開された「Top Graphic Design Trends 2022: Raising the Game」を許可をいただいて翻訳転載したものです。
INDEX
2Dと3Dの組み合わせ
3Dデザインのトレンドは、まだ広がっている途中で、今後はさらに進化し、そしてさらに当たり前の存在になっていくことでしょう。デザイナーに無限の可能性を提供する3Dデザインは、頭の中のイメージを具体的なデザインとして表現する助けになります。デジタルの世界と現実の世界の境界線が分からなくなるような超リアルな3Dデザインから、2Dや切り絵の要素を加えたクリエイティブなデザインまで、表現できることの幅もとても広いです。
2022年は、2Dと3Dのデザインを組み合わせることで、それぞれの美しさを引き立てるようなデザインに注目です。
このトレンドはイラストからアニメーション、Webデザイン、タイポグラフィなど幅広い分野で取り入れることができ、特にアプリのデザインでは人気を集めることになるでしょう。
「ひねり」を加えたフォント
このトレンドは、後に紹介するリソグラフ印刷風のスタイルと同様に、あえてフォントを少し崩して不完全にすることで、美しさを生み出します。
ここでの「ひねり」とは、1つの文字だけを逆さまにしたり、大きくしたり小さくしたり、異なるフォントを使用したり、完全に無くなくすというような行為を指します。テキストの中の数文字が、他の文字とは異なるメッセージを伝えているようなケースもあるかもしれません。「ひねり」を加えることで、何か特定のものを強調したり、特定の要素に注意を向けることができます。
ガラスとクリスタル
2021年は、リアルなゴールドを模倣したデザインが注目を集め、身の回りのアイテムに特別な雰囲気を与えてくれました。そして、2022年はそのトレンドがガラスやクリスタルに移り変わり、3Dで驚くほどリアルに表現されたデザインは、さらにレベルアップした存在となっています。
また、ホログラフィックや3Dのトレンドを引き立てる透明な要素やすりガラスのような背景など、今後も増え続けていくことでしょう。
キャンディカラー
身の回りにデジタルコンテンツが溢れている現在、大きな注目を集めるアートワークやWebサイト、アプリのデザインを作ることは簡単ではありません。
そのため、多くの作品を横に並べた時にユーザーの注意を引きつけるような視覚的なアピールが、コンテンツの質と同じくらい重要になってきています。
では、デザインを目立たせるためにはどのような方法があるのでしょうか。その1つの答えが、キャンディのように鮮やかな「キャンディカラー」を採用することです。
色彩理論を知り尽くした熟練のデザイナーやデジタルアーティストは、すでに美しいキャンディカラーを使った大胆で印象的なグラフィックデザインの作品を制作しています。
これらの事例の中で、イラストやWebデザイン、タイポグラフィ、アニメーションの中にキャンディカラーがどのように活用されていることが分かります。いい意味で注目を集め、力強くも親しみやすい雰囲気を持ち、少しサイケデリックな要素もありながら、非常に魅力的です。
リソグラフ印刷風のスタイル
全体としてトレンドがより大胆に、そして過去のスタイルに回帰するという方向に進む中で、リソグラフ印刷風のスタイルがフィジカルの世界でもデジタルの世界でも注目されることは当然のことでしょう。
数十年の歴史を持つリソグラフは、オフィスでの書類のコピーや事務のために使われていました。しかし、このスタイルはすぐに抽象的で美しいアートワークやポスター、広告などを制作するデザイナーのテクニックの1つとなりました。
それには2つの理由があり、1つ目は他のプリンターでは出せない独特で鮮やかな色彩を表現できる点、そして2つ目はインクのにじみ、色のばらつき、位置のずれ、質感の乱れなど、プリントに絶妙な乱れが生じるという点です。それぞれの色を重ねていく過程で、ちょっとしたずれや乱れが生じて、結果として鮮やかで魅力的な雰囲気が生まれます。
たとえ完璧に準備して制作しても、それぞれの作品がユニークで予想外のものに仕上がります。この完成が予測できない点が、リソグラフ印刷を挑戦的で冒険的なものにしています。
グラフィックデザイナーは、リソグラフ印刷の効果をデジタルで再現する優れた方法を見つけ、このスタイルを2022年のトレンドとしてカムバックさせました。
パッケージや印刷物だけでなく、アニメーションやタイポグラフィ、Webデザインなどにも取り入れることで驚くほど美しいデザインを生み出すことができます。
アール・デコ
鮮やかな配色、サイケデリックデザイン、そしてワイルドさの中で、クリーンで力強い直線をデザインの原理とし、他のトレンドと一線を引いたようなトレンドがあります。
それが「アール・デコ」です。アール・デコは、気品と1920年頃の合理的でなめらかな幾何学模様の要素を両方詰め込んでいます。
アール・デコとは、20世紀初頭アール・ヌーヴォーなどに対抗して登場した芸術様式で、その哲学は革新性、モダニズム、そして頑丈さ、静かな威厳、弾力性を持って前を向くことにあります。
この数年であらゆることが起きていますが、アール・デコのような哲学がアートやグラフィックデザインに回帰するのは不思議なことではありません。
この美しいスタイルを見分ける最も簡単な方法は、シンメトリー、幾何学模様、そしてシンプルながら美的感覚に優れた作品を探すことです。アール・デコは、伝統にとらわれず、幾何学的な形と大胆なアウトラインを取り入れています。
グラフィックデザイナーたちは、芸術や建築の領域におけるこのムーブメントをデジタルの世界に取り入れるクリエイティブな方法をやはり見つけました。アール・デコを取り入れた豪華なポスター、イラスト、名刺、Webサイトをご覧ください。
切り絵
伝統的な芸術がデジタル化されたものの1つが「切り絵」です。切り絵のルーツは4世紀の漢の時代、蔡倫が紙を発明した所にあります。
現存する最初の切り絵は、左右対称のシンプルな円形のもので、それがこの芸術の始まりとなりました。
歴史上、切り絵はあらゆる文化圏で見ることができますが、共通しているのはコラージュとは異なり、1枚の紙から切り出してデザインを作りあげるという点にあります。
もちろん、デジタルの世界ではグラフィックデザイナーは両方の技術を駆使してあらゆるグラフィックデザインの分野で素晴らしい作品を作り上げています。
切り絵は、特に名刺やパンフレット、パッケージデザインなどにおけるブランディングに最も良く使われます。また、挨拶状や書籍、最近ではアニメーションやWebデザインなどで見かける機会も増えました。
3Dのキャラクター
3DのキャラクターがアプリやWebサイト、アニメーションなどのグラフィックデザインで多く登場するようになりました。
これらのキャラクターは、2Dデザイン、ホログラフィック、キャンディカラーなど2022年のグラフィックデザインのあらゆるトレンドとの相性に優れています。百聞は一見にしかずということで、3Dキャラクターを取り入れたデザインの事例をいくつかご覧ください。
ホログラフィックデザイン
ホログラフィックデザインとは、簡単に言ってしまえばホログラムのようなデザインのことです。ホログラフィックデザインの持つ虹色の鮮やかな輝きは非常に魅力的で、グラフィックデザインのトレンドの中でも上位にまで上り詰めました。
最近では、文房具、プロダクトデザイン、ファッションなどの領域などでホログラフィックのトレンドを見かけるようになりました。
しかし、このトレンドは非常に魅力的なので、それ以外にもアプリやロゴデザインはもちろん、Webデザインやアニメーションデザインの領域においても登場しています。
ホログラフィックデザインは、光沢のある多次元のパステルハイライトを混合したもので、ハイテクさや未来的なイメージを生み出します。大きな特徴の1つに、静止画であっても動いているような印象を生み出すという特徴があります。
サイケデリック
1960年代のサイケデリックなデザインは、ねじったり、溶かしたり、歪めたりする美学によってデザインの世界を一変させました。
このスタイルは、不滅のトレンドとして、いつの時代でも新しいカウンターカルチャーの台頭とともに見られていました。
Wes Wilsonと彼の有名なロックのポスターから始まったサイケデリックなトレンドは、現代の混迷する世界のカオスを映し出すかのように、今また戻ってきました。心を揺さぶる色彩で、幻覚体験のような世界を生み出します。
音楽やファッションと同じように、グラフィックデザインにおける「サイケデリック」も、内面から力を引き出して束縛を打ち破ろうとする自由な精神を映し出すものです。
アニメーション、Webデザイン、タイポグラフィ、モーショングラフィックスなど、その成果は驚くべきもので、見るものを魅了します。
2022年、私たちはこのようなトリッピーなデザインをたくさん目にすることになるでしょう。