UXデザインとは優れたユーザーエクスペリエンスを提供するために行うものですが、全てが優れたUXデザインというわけではありません。このユーザーフレンドリーな世界には、ダークサイドも存在しており、誤ったデザインパターンは想像以上に蔓延してしまっています。

昨年、UXデザイン制作の代理店であるSigmaは、小売業界の大手ブランドが、卑劣なデザインのテクニックを使ってユーザーがより多くのお金を使うように仕向けていると指摘しました。その中にはAmazonやBoohoo.com、Currys PC World、Etsyなどが含まれていました。

ダークUXとはなんなのでしょうか。まずはじめに、「間違ったUX」と「ダークUX」の違いを認識しなければなりません。Sigmaによると「ダークUXは間違ったUXデザインというわけではなく、ユーザーではなくブランドに利益をもたらすための手法」だと説明しています。

間違ったUXとは違い、ダークUXは意図的な設計です。実際にユーザーが間違ったUXデザインだと認識するわけではなく、Webサイトやブランドが利益を上げるようになっていたり、ユーザーのニーズに応えるようなデザインになっていません。

ダークUXで作られたデザイン

ダークUXの基本的なパターンは、ユーザーが意図していない方向に微妙にプッシュするデザインにすることです。無意識のうちにメールマガジンを購読したり、余計な個人情報を取得したりすることで、買い物カゴの中に最初は意図していなかったものまで追加するように仕向けます。ダークUXは、ユーザーエクスペリエンスのためにデザインを制作するのではなく、企業の利益や目標を優先してデザインを制作するような方法です。

一般的な方法は、何かを購入した時に、ユーザーにオプションの選択が必須であると勘違いさせるようなデザインにすることです。例えばホテルの予約サイトの場合、宿泊したいホテルの予約が取れれば十分だという人がほとんどだと思いますが、ダークUXの場合はレンタカーの予約や、ホテルのグレードアップなどが並び、そのまま購入するためのボタンは一番下に隠されていたりします。

もう一つのダークUXの例は、リンクやボタンをクリックできないと勘違いしてしまうようなデザインにする方法です。グレーアウトされているボタンは直感的にクリックできないのだとユーザーは認識します。退会などWebサイトにとってネガティブな選択肢についてこういった方法を取ったり、ある選択肢を目立たせてそれが最もいい選択であると勘違いさせながらも、実際にはそうではないようなケースもあります。

デザインは時に恐怖心を利用して制作されます。Sigmaは調査の際に、特定のオンライン小売業者が嘘の時間制限をユーザーに見せるようなバナーを発見しました。実際には、その時間を過ぎても販売され続けているような状態でした。

言葉も誤解を招く可能性があります。不真面目なデザイナーは、勘違いされるようなコピーを利用してオプションの選択やチェックボックスのデザインにおいてユーザーを欺きます。ユーザーフレンドリーなデザインであれば、「登録する」「しない」の2つのボタンをシンプルに見せるような場合でも、ダークUXの場合はオプション毎に複雑な説明を表示し、よく分からないまま選択させるようなデザインにします。

簡単に言ってしまえば、ダークUXは心理学を利用してユーザーに特定の選択を迫るようなデザイン制作の方法だということです。

ダークUXを使ってしまう理由

ブランドがダークUXを取り入れてしまう理由は簡単です。彼らは売上を増やし、多くのデータを収集し、メールアドレスのリストを集めたりするために、ユーザーの行動をコントロールしたいのです。

短期的には利益が増えるようなことになるかもしれませんが、実際にはブランドに長期的なダメージを与える可能性があります。故意にユーザーを欺くようなデザインを使用していることがユーザーに気づかれた時、ユーザーからの信用はすぐに壊れてしまいます。法律に違反しているかどうかというわけではなく、ダークUXを取り入れることによってブランドの評判がガタ落ちしてしまうことにつながるでしょう。

本当に優れたユーザーエクスペリエンスを提供することよりも利益を優先していると、ユーザーはそのうちそれに気づくでしょう。卑劣なUXデザインはユーザーのストレスとなります。AからBにシンプルに移動させるのではなく、混乱を招くような導線でユーザーを誘導します。ユーザーがこういった卑劣なデザインを認識するようになると、それを使用しているブランドは非倫理的な企業だとみなすようになるでしょう。せっかく培った信頼や忠誠心が一気に離れていってしまいます。

ユーザーファーストなデザインが一番

UXデザインを通してユーザーとの信頼関係を築いていくことがこれまで以上に重要であり、それはビジネスにおいても同じです。過去10年間でもUXデザイン関連の企業は株式市場で228%の成長を見せています。

UXデザイナーは、ブランドとユーザーの双方に対する責任があり、優れたユーザーエクスペリエンスを提供することがあなたの仕事です。誠実ではっきりとしたユーザーエクスペリエンスを提供することで、ユーザーが望むべき選択をすることの助けになります。

そうすることによって、ブランドとユーザーの間の信頼性が高まり、今後もそのサービスを使い続けてくれる可能性が高まります。長期的に見ると、ダークUXを使って得られる短期的な利益よりもはるかに持続可能で価値あるものとなるでしょう。

この記事は、UX Planetとのコンテンツ配信契約の元で翻訳転載しています。

著者:Emily Stevens